百合染野書店(たぶん仮)

小説をgdgdやってきます seasonal girl

seasonal girls 1

とあることがきっかけで引きこもりになった豊橋(季高)節。

その彼が15歳と義母と義父から山霊女学院に強制的に入れられる。

 

 

 

 

 

この話はフィクションです。

 

いつの間にかもう5月。社会人や学生が慣れてくる時期である5月。GW(ゴールデンウィーク)によってだらける5月。
この5月はバラ色の人もいるだろう。
でも、一部の人は違う。5月で絶望を感じる人もいる。
学校でいじめを受けた人、ブラック企業に無理やり労働させられる人、家がない人と様々。
その人たちにはバラ色は単なる夢。今見ている色は説明しづらい。
言葉で説明するならば絶望一色だ。

ここにも絶望一色の15の少年がいる。名は季高 節(すえたか たかし)。男。引きこもり歴5年。
だが原因はいじめでも労働でもない。
彼には親がいない。母は彼が産まれたすぐに他界。父は彼が小学4年生の時に癌で他界。
彼の引き取り家族は父の知り合いの豊橋家に決ったが、その日から引きこもりが始まった。

義母は困っていた。引き取ったのはいいものの彼が心を開いてくれないことを。
義父も困っていた。彼がこのまま大人になることが不安で仕方なかった。
2人は考えた。
思いついた。
しかし、その方法は本来はやってはいけない方法だった。
義母は高校教師だ。山霊女学院に15年以上勤めているベテランだ。
その立場をわかった上での方法だ。
それが、季高節を天霊女学院に入れさせることだ。入学ではなく入れさせることだ。

「…やだ」
たかしが義父母の提案を聞いて発した言葉だ。
男子が女子高に入ることは実際にはない。もし、できたとしても孤独な人にとっては嫌なことなのだ。それがたとえ女子高じゃなく、男子校や共学であっても、人と接することはまっぴらごめんである。
今日もたかしは部屋に引きこもりだった。

GW終了後の月曜日の午前10時。月一回の精神科病院で診てもらう時間だ。
たかしを病院に連れていく手段は簡単かつ乱暴である。しかし、そうでもしなければたかしをどこにも連れて行けない。
義父の職場の休日は、日曜日と月曜日だ。朝8時に義父がまだ寝ているたかしを担ぐ。その状態で車に乗せ、病院に直行する。
義父にとっては、職業が配達業のためこの作業は朝飯前。
たかしにとっては自分が寝ているときにどこかに連れていかれるのは日常茶飯事だ。
そして病院にとっては、季高節という少年は長年の常連患者だ。

「はい。今日はここまで。今度来るときは6月の第2月曜日ね。それじゃあ。またね。」
検診、というより精神科の先生とのコミュニケーションが終わった。殆ど無言だったがそれがいつものことだった。50文字超えているほうで多いほうだ。今日は38文字だ。
病院の駐車場へ出て車に乗った。このときは流石にたかしは自力で車に乗る。
たかしは座席で静かに座り、義父はエンジンをかけて発進した。
いつもなら検診後すぐに家に帰るのだが、今日は違った。
「今日はもう一つ行くところがあるんだ。」
義父は話を投げかける。
「…何で」
たかしは3文字で返答した。
「義母(かあさん)が連れて行ってくれだと。」
…嫌な予感がする。数日前から義父母の様子がおかしい。たかしはこの数日間と今の義父の発言から勘付いていた。
「まさかそれって…」
「ああ。…山霊女学院だ」
「…………はあ!!!???」
車内にたかしの大声が響く。
「驚くことは予想はしていたが、そこまで大声を出すとはな…お前を女子高に行かせるのは、義父(とうさん)と義母(かあさん)も本当は不本意だとは思っている。だが、お前に少しでも社会とつながってほしいと考えて生み出した苦肉の策だ。」
「苦肉?」
「仕方なくってことだ」
帰りたい…っと思っていても車は家と逆方向に進んでいた。
数分後、あきらめて寝ることにした。

 

…夢を見ていた。
森の中で幼き姿のたかしが迷子になっていた。太陽が出ておらず、360度どこを見渡しても木や草以外には見えるものがうっすらと見えるぐらいだ。
時折不気味な音が聞こえるが、その音源となるものの影も形も見えない。
暗中模索で歩いていた。どこにも答えはない。それどころかヒントもない
時間が経つにつれて不快音が大きくなり、うっすら見えていた木や草も見えなくなってゆく。
比例して恐怖が増してくる。
反比例して歩く速さが遅くなっていく。
「助けて」
小声で叫んでいた。誰にも聞こえないぐらいの声で。

 

「着いたぞたかし、起きろ」
その声で夢の森から抜け出した。義父が助けてくれた…かもしれない。
車のドアを開け、車から出てみた。白い校舎が見える。義母がいた。
「やっと来たわね。とりあえず着替えなさい。いくら何でもパジャマで外に出るのは…」
寝ている間に病院に連れていかれていたのでパジャマなのは仕方ない。
「まあ、服は持ってきたからそれに着替えなよ」
「本当は制服がいいけど、入学ってわけじゃないから仕方ないわね」
たかしは義父から私服をもらい職員用更衣室へ着替えに行った。仕方なく。


着替えながらふと考えていた。車の中で診ていた夢を。あれは、何だったのか。小さいときの記憶なのかもわからない。不思議と続きが気になっていた。
あの森に何故いるのか、あと、あの後の自分の運命を知りたい。今までそんなこと考えたこと無かった。
10分かけて着替え終わった。シャツは黒の長袖Tシャツ、ズボンは藍色のジーパン。今日見た夢とマッチングしそうな組み合わせだった。
更衣室から出て職員室へ行った。職員室に着いた直後、義母に校長のところに連れていかれた。30分ぐらい話を聞いていたがあまり覚えていない。覚えているのは、お互い初めてが多いからよろしくっということだ。意味が分からないから覚えているだけだが。

 

気づいた時にはもう午後の1時であった。義母が職員用の弁当を2つもってきた。
「5時限目の授業があと30分後にあるから、早めに食べて」
と言い弁当をもらって食べ始めた。弁当に入っていたのは豚肉の生姜焼きとたくあん、きんぴらごぼう、そして白米。とても質素な弁当だ。問題点はたかしの食べる時間だ。これぐらいの量だと、30分ぐらいかけて食べ終わる。移動時間も考えて急いで食べないといけない。と義母は思っているが、もちろんたかしは別に授業に参加したいとは思っていないので、通常と同じスピードで食べている。

 

5時限目まであと10分。義母はもう食べ終わって授業準備をしている。そして、いまだに弁当を食べているたかし。義母は急かすが、たかしはまだ弁当を食べ終わらない。時々放心状態となって弁当を見つめる時間もあった。自然になった拒否反応だった。
豊橋先生、ご用件は何でしょうか。」
義母と誰かが話している。たかしの視線は弁当から会話している二人に変わった。そこにはこげ茶色の髪のロングストレートの女子生徒が義母と話していた。髪の毛は染めているようには見えない。
「じゃあお願いするわ」
「はい。では早速教室に連れていきます」
女子生徒がたかしに向かって近づいてくる。たかしは再び弁当を見つめ返した。
「初めまして。私、1年2組の学級委員を務めさせていただいている、春沢七海です。よろしく。」
それでも、たかしの視線は変わらなかった。春沢はむっとしている。
「もう。人の話を聞くときは話し手の顔を見るのは基本だよ。それはともかく、すぐに教室に行くわよ。弁当は残っていて勿体ないと思うけど置いて行くわよ。ついてきて。」
たかしは義母の机に弁当を置いて、椅子から離れた。

たかしの歩く速さがゆっくり過ぎたせいなのか、職員室からでて階段に行くのに時間がかかってしまった。そしてチャイムが鳴った。
「こういうのも何だけど、豊橋君歩くのが遅いよ。いつもどんな生活していたの。」
たかしは黙り続ける。ここに着いてからまだ一文字も話していない。
「まあ、いいや。ここでもたついても教室に着かないし…」
春沢はたかしに向かって言いながら歩いた。たかしも再び春沢に嫌々ながらついていった。

そして教室の前に着いた。先に春沢が教室に入った。
「遅れてすみません。豊橋君を連れてくるのに時間がかかりました」
教室にいる先生と話しているようだった。数秒後に春沢がたかしを教室の中に連れて行った。
教室は女子生徒しかいなかった。女子生徒たちもたかしも互いに動揺していた。それはそのはずだろう。女子生徒は誰も女子高に男子が来るなんて思ってなかったことだ。たかしはまず人と接することが嫌である。
たかしの席は春沢の右横だった。今日突然高校に行くことになったから教科書なんて持っているはずがない。そのため春沢に見せてもらうことになった。それでも授業を受ける気がない。たかしは5時限目どころか6・7時限目も何もないところを見ていた。休み時間は一部の女子生徒に話しかけられた。と言っても結局は一文字も話していない。
「どうして返答しないの?」
と言われた。蜂に刺された感触がした。

そうして、ほぼ何もせずに放課後になった。
豊橋君、職員室に戻るわよ。」
たかしは再び春沢についていった。数分がかりで階段に着いた。たかしが階段を下りようとした瞬間、春沢が急に足を止めた。
「そうだ!忘れていた!職員室に行く前に空き教室に連れてきてって豊橋先生言っていた!」
いきなり止まった理由はこれかと思いながら、空き教室へ連れて行ってもらった。

空き教室に着いたが誰もいない。ホームルームが終わってから30分以上しているから、普通遅いとかとやかく言われそうと思っていたのだが。どこを見渡しても春沢とたかしの2人しかいない。
「そういえば、豊橋君ってどこの中学校出身なの?」
春沢が気を紛らわせようとしたのか話しかけてきた。それでも、黙り続けるたかし。春沢はその行動にイラッときたようだった。
「あのね!質問しているのに何も答えないのは失礼だよ!」
その言葉を聞いて怯えるたかし。
「あ、ごめん強く言いすぎちゃった。怯えさせようとしたわけじゃないんだよ。ごめんね。…それで、出身中学はどこ?」
「…行ってない」
ここに来てからの第一声が5文字だった。
「…え。じゃあ小学校は?」
「どこだったっけ…」
「…まさか…覚えてないの?」
たかしは首を縦に振った。春沢は少し下を向いた。
「…そっか。本当に知らないのね。…そうだよね。私の名前を言っても、何も反応してなかったからね…」
たかしはその発言に疑問を持った。春沢七海…聞き覚えはない名前のはず。
「小学校同じだったのに。それどころか小学校の登下校、一緒だったのに…。それに毎年クラス一緒だったのに…もっと言えば保育園も同じだったのに…」
疑問が次から次へと出てくる。回答をするために小学生の時の記憶を遡ろうと試みるが全く思い出せない。春沢の顔は、いつの間にか涙ぐんでいた。
「私、本当の名前知っているよ。豊橋じゃなくて季高ってこと知っているよ。本当は季高君って言いたかった。でも、職員室や教室ではそんなふうに呼べないし…だから、ここに連れてきたの。季高君と話したくて…。嘘ついてごめんね。」
たかしはそれを聞いても全く思い出せない。
「私も季高君、どっちもすごく変わったよね…。私は小学生までは責任感負えるような仕事なんて出来ない引っ込み思案な性格だった。でも、今は学級委員になっている。季高君は小学生の時は天真爛漫でみんなに笑顔を振りまいていた。だけど、引きこもりが始まって、会えなくなって。今日会ってみたら昔の面影がなくて、名前とか憶えてなくて、誰とも喋らなくなって、さみしかった。」
春沢はたかしに抱き着いてすすり泣いた。疑問は大体解決した。が、一つだけ謎があった。
「てんしんらんまんって何?」
春沢はきょとんとしていた。先ほどの質問で心が泣いている状況からから笑う状況に変わった。
「知らないの?天真爛漫っていうのはね、いつも無邪気で明るいことだよ。」
彼女の目から流れていた涙は止まっていた。
「でも、意外と変わっていないところもあるんだね。勉強面苦手とか、身長とか、匂いとか」
「変わってない?」
「うん、だって見る限り身長は150センチぐらいだよね。小学生の時もそれぐらいだった気がするし。私の身長は157センチだから、私のほうがちょっと大きいかな。なんならお姉ちゃんって言ってもいいよ」
たかしの内心はそれを否定していた。でも最後の匂いとは何のことなのか。
「匂いって?」

たかしは珍しく質問をした。たぶん、小学生ぶりだろう。
「季高君も少しずつだけどしゃべるようになったね。忘れていると思うけど、小学校の時に似ている動物っていうのでみんなが私に言っていたのが犬って答えたんだよね。料理で使われているものを嗅ぎ分けられるし、堅実そうって言われたよ。季高君の匂いも何となく覚えていたから、会ったときこれは季高君だってわかったの」
たかしは質問したことを少し後悔していた。
「まあ、せっかくまた会えたことだから仲良くしようね。そして思い出させてあげる。過去のこと全て…。さて、ここに長くいるとほかの人に見られるかもしれないし、それに豊橋先生も待っているだろうからすぐに行こう。また明日、放課後一緒にいようね」
そういいながら春沢はたかしの手を引いた。

たかしに宿題が渡された。

人と関わることと、過去を思い出すことだ。

この宿題を終わらせるため、3年間山霊女学院にいることになった。

 

 

 

続く

 

 

あとがき

こんな面倒くさい男子主人公がいてたまるか、と思いつつ書きました。

どうも百合染野です。3年前に書こうとしたやつをいまさら書くになりました。

たぶん下にS野時代の時に書いたI don't need girlfriends.があると思います。

その時よりかは国語力が上がったはずなのですが、まだあやふやなところが多いです。

ほかの言い方をすると、国語大嫌いで表現がうまく使えないです。

ただ驚いたことは、初回でこんなに書けるとは思ってもいませんでした。S野時代の5倍ぐらいの長さです。(確かその時は原稿用紙2枚ぐらいしか使っていなかったはず)最初は1回につき原稿用紙4枚ぐらいを目標にしていたのですが、実際書いてみたら、まさかの5200文字。予定よりもオーバーしすぎです。( ゚Д゚)次回は目標ぐらいに減らすつもりです。できればね。

よろしければこの話の感想、間違えた日本語のご指摘をお願いします。

 

追記  誤植が多い( ゚Д゚)見直しただけでも( ゚Д゚)