百合染野書店(たぶん仮)

小説をgdgdやってきます seasonal girl

seasonal girls 2

事故のショックにより記憶が消えている少年、豊橋(季高)節。

彼が急遽生かされることになった山霊女学院には、小学生の時に同じだった(らしい)春沢七海に出会う。

 

 

 

 

義父母の禁忌の提案により山霊女学院に入ることになってしまった引きこもり歴5年の少年。豊橋節(とよはしたかし)。本名は季高節(すえたかたかし)。
朝、7時に義父母によって強制的に高校に連れていかれ、1年2組の学級委員長の春沢七海(はるさわななみ)によって強制的に教室に連れて行かれる。放課後に春沢に空き教室に連れて行かれ10分程度の雑談をするのが、節の高校生活もどき生活だった。

その生活がもう1か月も経った。
1か月の時があれば桜も散る。長い梅雨も終わる。花が枯れる。動物は冬眠の準備をする。
しかし、時が過ぎても節の時間は止まったままだった。
時を動かそうと、今日の放課後も春沢は話し続ける。

「タカ君って、いつも家では何をやっているの?」
タカ君、小学生の時の呼び名だ。これまでの記憶が9割以上忘れている節だが、最近思い出した貴重な情報だった。一部の男子からは季高節に二回たかが入っているため、タカタカとも呼ばれていた。その呼び名は春沢も覚えていた。呼び名を使えば記憶を芋釣り式に出てくるはずと考え、放課後の雑談では豊橋君とは呼ばずにタカ君と呼ぶことにした。
「…寝ている」
「そう。なんかもったいないような…。まあ、それは人それぞれだからね。私は予習・復習・自習を合わせて3時間、残った時間はラジオ聞きながらストレッチとかしているね。たまに電話とかもしているね。時間は有効に使わないともったいない気がしてさ、ぼーっとしている時間は少ないかな。」
節と春沢の生活は正反対だった。
「そうだ、土日に部屋の掃除をしたらどうかな?人間って部屋を掃除するだけでもストレスが減少できるらしいし、気持ちを落ち着かせる効果もあるからいいんじゃないかな?」
「………」
節は自分の部屋の様子を浮かべていた。特に置いている物がない。空っぽの部屋だ。あるとすればシーツがはがれている布団ぐらいだ。散らかっているものはそれぐらいだ。そのため、自分の部屋にいるときはほぼ寝ているか考え事をしているかの2択なのだ。
「じゃあ、運動するのはどう?タカ君小さいときからサッカーやっていたから、運動面ならどんなことでも続けられると思うよ。」
そうは言われても節は引きこもり歴が5年。その間運動という運動を全くしていない。家の中でも外でも歩くぐらいしか運動していないのだ。それに、いきなり過度な運動をすることを節は嫌がっていた。この高校に入ってから授業をまともに受けていない。体育さえも。
「時間を無駄にするのは本当にもったいないよ。Time is money だよ。過ぎた時間は戻らないから今を大切にしないと。だから、趣味とかを作ればいいじゃないかな?」
春沢はサポートしようとしていた。記憶を思い出させること、他の人のつながりを持たせること。それを節に身に着けっさせるためには、彼の崩れている生活を修正していくのがカギとなると考えていた。言葉遣いにも気を付けていた。なるべく明るく接することと言葉のチョイス。1つの発言に彼は傷つくかもしれない。そうなると、さらに他の人とのつながりを離してしまい引きこもりに戻ってしまう。
節の時間は止まったまま。そのため、気持ちや考え方も引きこもり前と同じ。小学生とは、とても小さなことでも傷付きやすく治るのにも時間がかかる。節の場合は治療期間が長期になりすぎだと思うが、それでも春沢はゆっくりと彼の傷を癒えるようにしていく。
勉強3時間よりも難しい宿題だ。これを放課後10分でどれだけできるのか。

 

時は止まるはずもなく、気づけば10分過ぎていた。
「さて、もう時間か…。職員室に行こうか。豊橋先生も待っているはずだよ。」

 


こんな感じで毎日が過ぎていく。季節は少しずつ変わっているが、節は何も変わらない。

 

明日も同じことがやってくる。時間が止まっているのか、はたまた時間が戻っているのか。

 

Time is money その言葉があるから時間を操作なんてできるはずがない。

 

今日も義父母に高校に連れて行かれる。放課後、春沢と話をする。

 

それが節のルーティンワーク。

 

夢を思い出した。小さい自分が迷子になっている夢を。

 

あれは予知夢だったのか。それとも偶然か。

 

…わからない

 

夢と同じようにこの社会で迷子になっていた。

 


今日も義父母に高校に連れて行かれた。車の中はいつもと変わらない。だが、義母はいつもと違っていた。
「そういえば伝え忘れていたけど、今日春沢さんはESS部の英作文大会で公欠しているから、別の生徒2人があなたの誘導役になるからね。」
「………そう。」
「興味なさそうね。でも、何か1つぐらいは発見したことがあるはずでしょ。」
いつもと違った。思えば春沢以外の生徒と1ミリも接していない。春沢でも無言が多いというのに、他の生徒と話すとなれば、無言どころか拒否反応がでるだろう。
変わった日常は精神的にも身体的にもきつい。節には適応力が足りていない。というより、足りている要素が1つもない。

 

車から降り、職員室に入った。そこにはさっき言っていた生徒二人がいた。
1人は髪を後ろに一つにまとめ眼鏡をかけている袖を捲っている生徒。
もう1人は髪がショートカットで母性感あふれているが、髪色がブロンドの生徒だった。
「小夏さん、いくら朝練後だからってワイシャツの袖を捲ってはいけないでしょ。それにまだ衣替え期間じゃないからブレザーもちゃんと着ること。そして、辻井さんも風紀委員なら注意しないと」
二人とも先生(義母)に謝る。眼鏡をかけている生徒は制服を正した。
「以後気を付けるように。そして今日は春沢の代わりにこの子をよろしくお願いするわ」
「わかりました」
二人の生徒は口を揃えて言った。早速節を教室に連れて行くことにした。
節はいつも通り、ゆっくりと歩いていた。3分かけて階段前に着いた。教室までまだ距離はある。
豊橋、そんなにゆっくり歩いていて大丈夫なのか?」
「授業間に合うかな?春沢ちゃんがいつも1時限目に間に合わない理由が分かったかも…まあ遅れても先生に事情を説明すればいいからね。」
「あたし時間通りいかないのは気に食わないのよね。豊橋が階段上るのにどれだけ時間かかるか分からないしな。」
眼鏡の生徒はまたブレザーを脱ぎ腰に巻き、ワイシャツの袖を捲る。突然ストレッチを始めた。
「もう、またブレザー脱いで。駄目だよ制服着崩しちゃ…。私、注意するのは嫌だよ。」
「さっきは注意していなかっただろ。それに早く教室に着くためだ。」
腕を回す眼鏡少女。風紀委員として注意をするブロンド髪少女。そして特にすることのない節。節は腕時計を見ていた。なんとなく。授業が始まるまであと2分。この階段を上り終えるのにかかる時間の平均は4分。間に合うわけがない。が、気にすることはない。授業なんて受けても自分のためにならないし、そもそも強制的にここ(高校)に入れられたからどうでもいい。
豊橋、一つ聞くが体重何キロだ。」
「まさかだけど小夏ちゃん…」
「早く言ってくれないか。あと何分で授業開始か分からないけど、感覚的に数分しかない気がする。さっきも言ったようにあたしは時間原則がモットーだからね。」
戸惑う節。何故そんなことを聞くのか。
「そんなに強い口調じゃなくてもいいのに…。ねえ豊橋君って体重何キロ?」
「………46」
「46キロ…かなり軽いね。栄養バランスとか大丈夫?」
46の数字を聞いた眼鏡少女はストレッチを終えた。
「了解。じゃあ一気に行こうか!」
眼鏡少女は節に前に近づき、右手を頭の後ろに、左手を足の後ろに回した。
「力、抜いておけよ」
節はその言葉を聞いた瞬間、体が宙に浮いていた。眼鏡少女に持ち上げられていたのだ。
普通この体制は男性が女性にすることではあるが逆の立場では驚きだった。節は声には出してはいなかったが驚きでいっぱいだった。
抱きかかえられた節は混乱している。現実なのか夢なのか。驚く速さで階段を上っている。自分の力ではなく、女子高生によって上っている。華奢な女の子がこんな怪力だとは思っていなかった。

混乱が治りかけていた時にはもう教室前だった。彼女は宙に浮いていた節の足をリノリウムの廊下につけた。
「もう、そんな無茶して。教室入る前に制服を正して!」
「はいはい、悪うございました。」
眼鏡を拭き、ワイシャツの袖を直し、ブレザーを着直した。合計15秒。
そして、三人で教室に入った。
数秒後、授業開始のチャイムが鳴った。
本当に2分の出来事だったのか。節は授業中ずっとそのことを考えていた。

 

続く

 

あとがき

また書きすぎてしまった( ゚Д゚)

どうも高校生時代国語力の低さで定評がある百合染野です。

今回は3000文字ぐらいに無理やり変えました。実は変更前は5000文字。

前回のあとがきに減らすとか書いたのに全くできてない( ゚Д゚)

もう次回分の文章もほぼできている状況です( ゚Д゚)

そのため続きは来週に上げる予定です。

 

そしてリンクを変えました。気になった方はそのリンクに飛んでください。

特に百合染野図書館にある異能力の使い方はseasonal girlsよりも力を入れています。

が、見られている回数がこっちより少ないです。

もしよろしければ見てください

yurizomeya.hatenablog.com

 

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