百合染野書店(たぶん仮)

小説をgdgdやってきます seasonal girl

seasonal girls 8

引きこもりの豊橋(季高)節は人口密度が大きい場所は苦手。

それなのに強制的に花火大会に連れて行かれた。

 

皆花火ではしゃいでる中、節は安息地を探していた。

 

 

 

花火大会会場に向かう途中、会場付近にちらほら屋台があった。
トウモロコシ、から揚げ、ジュースなど数えきれないほどの屋台が出ていた。
屋台を見た義母が鞄から財布を取り出し、中から3000円出して節に渡した。
「義父(とうさん)とやよいに今日の夕食は外食って伝えたから、今夜の私たちの夕食は屋台の食べ物よ。食べたいのがあれば自分で買いなさい。たまには家族や友人以外の人と話すべきよ」
節は3000円を貰ったものの使い道がない。
別に一食無くたって死ぬわけではない。それに周りの屋台で興味を抱くようなものがない。食欲があっても、そのものを食べたいか食べたくないかの有無とは全然関係ないものだと思う。
節は貰ったお金をポケットの中に入れた。家に帰った後にテーブルにこっそりと置いて、義母にお金を返そうと思った。
「そのお金、全く使わないのは無しよ」
が、義母は節の思考を読んでいたようだ。

「おじさん!トウモロコシ1本と焼き鳥5本!」
秋奈はトウモロコシ屋のおじさんからプラスチックの容器入れられた焼き鳥と、焼き立てほやほやのトウモロコシを貰った。
早速秋奈はトウモロコシを口に運ぶ。
「うーん、トウモロコシって少し焦げた感じのものに醤油を塗ったものがベストだと思うんだよね、私。」
秋奈は感想を残してものの1分でペロッと食べた。トウモロコシの芯は1粒も残っていない。
そしてすぐさま焼き鳥に手を付けた。こちらも少し焦げている。
「大体の焼き物に関して思うことなんだけど、何で少し焦げたもののほうが美味しいのかな?普通に考えれば、ただの炭と同じはずなのに…」
1本目の焼き鳥を食べた後の感想が、何故か哲学的なものだった。そして何故か節に問うような目をしていた。
自分の知ったことではないと考える節。うまいものはうまいに決まっている。まずいものはまずいに決まっている。それが答えだと思った。

思った…けど…。今の自分って味を楽しむことをしてなかった気がする。
最後においしいと思ったときっていつだっけ。どんなものに対しておいしいと思ったっけ。
その時、節は自分の中の時間が止まっていたことを自覚した。が、それ以上のことはしなかった。自分の中の時間を動かすのが自然と怖いと感じる。

「タカ君も1本食べて見てごらん」
節は秋奈の一言で上の空の状態から戻った。そこには秋奈が焼き鳥1本を節に差し出していた。
「いらない」
「そう言わずに食べてごらんよ。冷めるとおいしくないよ。ほら、あーんして」
秋奈は右手に持っている焼き鳥を節の口に近づけ、左手を手皿として添えた。
節を見つめてほほ笑む秋奈。
秋奈の目線を避ける節。
その2人を見て動揺する外野。
「こらー!風紀委員である辻井秋奈ちゃんが公共の場で不純異性交遊とは、けしからん!」
「そうだ!どうせするなら秋奈は自慢の胸を差し出せ!」
「その…秋奈さん…焼き鳥だと櫛がタカ君の口に…誤って刺さってしまう可能性が…」
外野全員勘違いしていた。外野全員ツッコミがずれていた。
それを収集したのは義母だった。
「まあ遊びとは言え、外で誤解を招くようなことはしてはいけないわね。春沢の言う通り不純異性交遊を風紀委員が犯すのは、流石に問題あるわ。自分の行動に責任を持つように。あと小夏も言葉を慎むように」
「すみません」
秋奈は即座に義母に謝った。義母はそれを見てうなずき、視線を節に向けた。
「でも、節も節で悪いわよ。せっかく辻井さんが、親切におすそ分けしようとしたのにも関わらず無視するのはどうかと思うわよ。辻井さんに謝りなさい」
何故誤る羽目になっているのか節は疑問に思っていた。何はともあれ謝らなければ後々義母に怒られるかもと思い、節は面倒くさいと思いつつ秋奈に謝った。
「ごめん」
「いいよいいよ。私の対応も悪かったから」
秋奈はプラスチックの容器に焼き鳥を戻し、節に渡した。
節は断ろうとしたが、ここでその手段を使うと義母に怒られる予感がしたので、渋々だがもらうことにした。
「ものを貰ったら何て言う?」
春沢が節を睨みながら言った。
「…ありがとう」
「どういたしまして。よくできました」
秋奈は優しく返答した
春沢の顔も硬い顔から緩んだ。
2人は節を小さい子供を見るような生暖かい視線を送っていた。真冬はその状況を見て羨ましそうにしていた。
だが、1人だけ視線が違った者がいた。小夏だ。
「そういえば午前中にスポーツドリンクを渡したのに、ありがとうって言わなかったよな」
小夏が節に皮肉な言い方で言った。
「小夏さん…そんな意地悪な言い方をしなくても」
「ああ悪い。だが、誰に対しても音がある人に礼を言うものだろ」
強制的ではあるがあの時スポーツドリンクを渡してくれたのは、事実だ。
「…ありがとう」
小夏は節の声を聴き、少しにこっとした。話を横から聴いていた秋奈は首を傾げていた。
「珍しいね。小夏ちゃんが誰かに物を差し出すなんて」
「仕方ないだろう、あいつ水分も何もなしで運動部の見学していたんだぞ」
「でもいつもなら『持ってきていないほうが悪いとか』いうのに」
「う、うるさい。たまには善を施してもいいだろう」
小夏は赤面していた。
「あれ?なんで顔赤くなっているの?」
「お前が変なこと言ったからだろ!」
「へ?」
秋奈はただ小夏の反応を見てポカーンとしていた。
女子たちの話は差し置いて、もらった焼き鳥を食べて見たらおいしかった。おいしかったと思うのは何年ぶり何だろうか。

 

「さて、次は何食べようかな。綿あめもいいな、たませんも食べたいし。フランクフルトもおいしそう」
「相変わらずだが、お前どんだけ胃袋に空間が開いているんだよ」
前に聞いた話だが、小夏と秋奈は同じ中学出身。3年間同じクラスだったそうだ。
そのため双方の性格や好物など知っている。
「前にあたしと二人で遊んだ時もすごい量食っているよな」
「え?そうかな?」
その発言は節も少し気になっていた。
いつも節は彼女が作った弁当をもらっている。
正直1人分でもなかなか量があるというのに、彼女はその弁当を2人分食べている。
気分によっては3人分の時もある。その量を平然とした顔で平らげている。
そうと考えると小夏が呆れた顔をするのもわかる気がする。
「まあ、あんた食べたものはすぐにおっぱいにいくものからね」
「ちょっと小夏ちゃん、公共の場で何言っているの」
「少しばかりの下ネタぐらいはいいだろう」
「よくないよぉ!」
節は2人が騒いでいる光景から目を背けた。聞いたら後々怒られそうな気がして。

空は真っ黒だった。太陽は西に沈み切っていた。小さい光源として星が見える。
いつの間にかずっと上を向いていた。どこかのヒット曲みたいな気持ちになっていた。
空を見上げていた節に気づいた春沢と真冬が近づいてきた。
「あれ、夏の大三角だね。わし座とこと座と白鳥座がこんなにくっきり見えるのは初めて」
「天の川も見えますね。彦星と織姫の話を…ふと…思い出してしまいます」
節はなんとなく七夕を思い出していた。小さいときは何を願ったのか。
覚えていない。
短冊に何を書いたのか。
思い出せない。
「小さいとき、短冊に何をお願いした?」
春沢が節の心を見通すように質問してきた。
「…私は…お父さんやお母さんのように医師になりたいと思っていました」
流石医者娘というべき願い事だった。しかしその発言後、真冬は下を向いた。
「…でも…今の成績だと医者になるなんて…夢のまた夢。…絵に描いた餅。…私は医者向いていないと考えてしまうんです…」
「真冬ちゃん。ネガティブにならないで。二学期から頑張ればいいんだよ」
「…そうですね。それに…祭りで暗い発言はタブーですね…すみません」
ネガティブ思考の人にはポジティブ思考の人がいると中和する。そうと考えると春沢と真冬は相性がいいのかもしれない。
春沢は真冬の頭を撫でて落ち着かせた。あってから数か月。2人は姉妹のような感じだった。小夏と秋奈も似た感じだった。
ふと、やよいの事を思い出した。
やよいを妹と思ったことはない。だけど、同じ屋根の下で過ごしている義妹だ。
何故、2人は仲が悪いのか。元は2人の関係は赤の他人だからなのか。だから義妹は家にいたがらないのか。関係がないならその場にいないのが正解なのか。もしそれが正解だとすると自分も家出するべきなのか。でもその後はどうすればいいのか。
社会とはジャングルみたいなもの。あの夢みたいに。
「どうしたのタカ君?意識がどこかにいっていたよ」
春沢が節の肩をたたいて意識を戻した。
「…タカ君は幼いとき…何をお願いしました?」
先ほどの質問が自分に送られてきた。真冬の目は興味津々だった。
回答はもちろん。
「…覚えていない」
これしか言えなかった。
「…覚えてないですか…気になっていましたが…残念です…」
真冬は少し息を漏らしていた。機体の回答ではなかったのが不満だったらしい。
「でも予想として、単純だと思うんだが。節は過去にサッカー部に入っていたんだろ。サッカー選手とか」
「幼いころのタカ君、見てみたいなあ」
会話に小夏と秋奈が入ってきた。よっぽど気になっていたのだろう。でも秋奈は話に入っているのかわからないところがあるが。
「私、小さいころのタカ君の願い事知っているよ」
それを発言したのは、春沢だった。節と春沢小さいころから一緒だったというのは本当のようだ。女子3人はその言葉に食いついた。しかし春沢はなぜか顔を赤らめて沈黙してしまった。
「それは…タカ君のプライバシーに関わるから内緒ってことで」
女子3人はさらに食いついた。秘密は知りたくなるのが女子の心理なのかもしれない。
「それはそうと、そろそろ花火大会開始時間だね。そろそろ会場に移動しよ?」
急に話題を反らす春沢。でも彼女の発言は正しかった。あと10分で花火大会が開始するのだ。


花火大会開始時間。花火会場である川にやっと着いた。
花火を待ちわびているのは、自分たちだけではなかった。多くの人がこの川に集まっていた。
山霊女学院の総人数よりもはるかに多かった。節にとって恐怖があった。こんなに人数がいるところに潜り込むのは初めての経験だった。

1つの光が空虚に向かっていった。やがて大きな光の花となり咲き誇った。
それに続くように2つ3つと炎の粒が星空に飛ぶ。空に円状の明かりが灯る。
「綺麗…」
「花火見るのは何年ぶりだろうな」
「たまやー!かぎやー!」
「…見るだけでも…楽しい気分になりますね」
全員花火に見入っていた。
節も心の中で花火が綺麗だと感じていた。
しかし問題として周りの人間への恐怖心が増幅してきた。
気のせいなのかこの場にいる全員に睨まれている感覚があった。
実際はそのようなことは全くないのだが、人とのかかわりが少ない者にとってはこの大人数は精神的に耐えられない。節も同様だ。
節は花火会場から離れた。離れていても花火は見える。はっきりとは見えないのはデメリットだが、この人間地獄から脱せれるなら少々の負荷は気にしなかった。

 

ひと気が少ない場所を求める節は、花火会場の近くの公園を見つけた。
誰もいない公園だ。ここなら落ち着けると思い、公園内のベンチに座った。
ひとまずここで休憩。仮に誰か来たら、また移動すればいい。
ここでも花火は見える。花火会場よりかは迫力が小さいのだが、それでも同じ花火ということは変わりない。自分の周りは誰もいないので静寂なスペース。音が鳴るのは花火だけ。
やはり静かなのは落ち着く。空を見上げながら感じていた。

 

花火大会終了まであと15分。フィナーレにふさわしいほどの多くの玉が空に消えていく。
かなり発射場から距離が離れているというのに花火の音は大音量だった。
それと混じって変な音があった。音源は近くにあると感じ、節は周りを警戒した。
よく見ると公園の入り口に男の子が泣いていた。
よくみると…自分に似ていた。

 

 

続く

 

 

あとがき

一か月ぐらい空いてしまった( ゚Д゚)

どうも百合染野(ゆりぞめや)です。

色々分け合って一か月ぐらい空いてしまいました。

夏休みは1週間に1つの目標はどこへやら…

本編内にある小学校訪問は番外編として後々書くつもりです。

できれば早めに。

感想、誤字脱字があればコメントでご指摘いただくとうれしいです。

 

↓こちらも絶賛遅刻中です( ゚Д゚)

yurizomeya.hatenablog.com